小雨の中、予備知識なく美術館へ向かう。
”私にとって、絵画は求道である。心の平和への階梯である。
私は絵画の探求のなかにあって、発見し、歓び愉しみ、追求し、より真実なるものへと歩みよっている。人間成熟への道である。生活の哀歓のすべてが絵画につながっている。技を磨き技を練ることじしんが、人間性の発見である。”
三岸節子 「美神の翼」 求龍堂 P.22 一つの世界 より
名古屋駅8:25の名鉄で一宮駅へは8:39分に着く。360円。名鉄バス8:55起工業高校前で下車、15分。330円。
生家跡を市が買い取って作ったという美術館の建物は、紡績工場を模した作り。そしてヴェネチアの狭い水路を彷彿させる水の流れがあり、そして幼少時足が悪く多くの時間を過ごしたという土蔵がある。
資産家に生まれ、名古屋の淑徳の寄宿舎に入り同室の上級生が絵を習っていたことに触発され絵を志す。東京に出て絵を学び、三岸好太郎と出会い結婚。29歳で好太郎を亡くし、その後女手一つで3人の子を育て、戦時中も疎開せず静物画を描く。94歳迄現役で絵を描き続ける。
土蔵の中に、画家の製作風景が垣間見えるキャンバスと座布団。絵に向かい、絵にすべてを集中させるアトリエが現出。画家の絵の具で盛り上がったパレット。
偶然であるが、画家の代表作はヒマラヤ美術館閉館の際、負債のかたとして散逸した”ヴェネチア”とされるが、同じくヴェネチアを愛した作家須賀敦子に関する本を車中で読んだ。画家がその都市を愛し、数々の絵を残したという偶然を思った。
70年以上に及ぶ画業の奥には、燃えるような求道の心があったのである。極彩色ともいえる”花”の赤色のように、燃える心が。
夫の好太郎が24歳の時に妻の節子をモデルに描いたものである。
赤い、肩掛けを羽織っている。
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