夢見るように、考えたい

池田晶子さんの喝、”悩むな!考えろ!”を銘としております。

ジェイムズ・ジョイス

アイルランドに生まれ、ある時期からアイルランドに還ることなく亡くなった作家、

ジェイムズ・ジョイスの”ダブリンの市民”を読んだ。

ダブリンの市民 (岩波文庫)

ダブリンの市民 (岩波文庫)


一時期、ケルトの神話や図案に強く惹かれた時期がある。なにか尾を引くのである。

一番初めに知らず接したのは荒俣宏氏が初期の早川FT文庫(1979.2)で紹介されたこの本であろう。

ペガーナの神々 (ハヤカワ文庫FT)

ペガーナの神々 (ハヤカワ文庫FT)

FT文庫5冊目であるからあるいは1回目、あるいは2回目の配本であったかもしれない。初期ではパトリシア・A・マキリップの”妖女サイベルの呼び声”が特に好きであった。

妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1)

妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1)

!なんとFT文庫1巻である!グイン・サーガの1巻目も確かこのころから始まった(確認すると、1979年9月頃か)。評論社の”指輪物語”を読んだのもこの頃。

従来は”ナルニア国””ゲド戦記”というジュブナイルとして提示されてきた”ファンタジー”が、現在にも続く文学の一分野として認知されだしたのは、この頃ではないかと推測する。勿論個人的にも図書館にあった「ナルニア国」の岩波の品のいいハードカバー本が、文字通り我がナルニア国への入り口となった。
(クリスマスに全巻揃えを買ってもらったのも懐かしい)

豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA)

豹頭の仮面―グイン・サーガ(1) (ハヤカワ文庫JA)

指輪物語 (1) (評論社文庫)

指輪物語 (1) (評論社文庫)

ライオンと魔女(ナルニア国ものがたり(1))

ライオンと魔女(ナルニア国ものがたり(1))

影との戦い―ゲド戦記 1

影との戦い―ゲド戦記 1

”サイベル”については、これは未読だが、確か岡野玲子がマンガ化されている。

コーリング (Act1) (Mag comics)

コーリング (Act1) (Mag comics)

それまでは”ドリトル先生”一辺倒であった僕の”脳内文学界”が一気に開けた頃である。

ドリトル先生アフリカゆき (ドリトル先生物語全集 (1))

ドリトル先生アフリカゆき (ドリトル先生物語全集 (1))

その頃は、”ドリトル”と聞くだけで、心は”沼のほとりのパドルビー”まで飛んでゆき、想像上の自分は動物に囲まれ・・・という世界、だから同じく幻獣にかこまれたサイベルに惹かれたのであろうか。


いや、話が激しく横にずれた。アイルランドの話であった。



神話以外で、現実のアイルランドに出逢ったのは、とんぼの本のこの一冊。

アイルランドへ行きたい (とんぼの本)

アイルランドへ行きたい (とんぼの本)

ぼんやりと”欧州”ひとくくりで、どちらかというと英国の一部のように捉えてきたアイルランドが、どうやらそうではないということが、写真の間から立ち上ってきた。

これはなんなのか?

暗い、情念のようなものを感じる。その根っこには、宗教間(カトリックプロテスタント)の対立があるように思った。

キリスト教、個人的にも関係がある話だ。実は僕は幼児洗礼を受けている。


ああ、ちょっと時間がないようだ。ほとんどジョイスに触れることができず、マクラオドとユリシーズについても触れられず・・

とりあえずは書影のみを示しておく。

かなしき女王―ケルト幻想作品集

かなしき女王―ケルト幻想作品集



『ユリシーズ』と我ら―日常生活の芸術

『ユリシーズ』と我ら―日常生活の芸術

ケルトの地は不毛という。入植者は、岩を砕き、海草を漉き込んで土を作ったという。

その地に伝わったキリスト教はエジプトを経たものか。ドルイドの地に伝わったそれが、どのように受け入れられ、拒否され、同化され、換骨奪胎されたのか。

それが今の宗教紛争につながるのか。

つきつけられる階層差。イギリス人への複雑な思い。
見せて欲しくない暗部。かくしておきたい本音。

ジョイスがながらく”アイルランド”と不仲であったこと。

そのことがこの本の本質を正しく指し示している。