さて今週はいささか精神的に参っている。
救命具を掴むように、池田晶子さんの唯一の文庫本”考える人”をカバンに放り込んで電車通勤。
- 作者: 池田晶子
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1998/06/01
- メディア: 文庫
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実はこの本、手軽な文庫形式なのであるが、結構歯が立たなかった。きちんと読めていない。
知力と気力がまだたりないな。
といささか残念な気持ちでいた本なのである。
特に冒頭のヘーゲルの項。
池田さんも気を遣って、読めなければ無理をするなと言っていただいて引用されたヘーゲル。
・・・やっぱりわからない・・・
だったのだが、昨日読んでみると少し、ほんの少しだが、
なんか読める。
ああ、この歳にしてやっとすこうしだけ。
ありがとう、池田さん。
少し引用させていただけば、
P.31 ヘーゲルの項です。
”さあ、観察してみてほしい。Aがある、Aがないと考えることができる自分の思考のうごめきを。
「ない」なしに「ある」と言うことができますか。
「ある」のない「ない」がありますか。
「ある」あっての「ない」であり、「ない」あっての「ある」である。
こういう言い方のうちに既に「ある」と「ない」とは同じであって同じでなく、しかも両者があざなわれた縄のようになって運動始めているのが、観察されますね。
これが、その名も高き「弁証法的統一」である。
そして、歴史の基礎である。”
(一部傍点がありますが、つけ方がわからずつけておりません。
また改行は原本とは変えてあります。それ以外は原本どおり)
読んで辿ったリズムで改行を変えているが、なんともわかりやすく解説してくださっているのだ。
この数行の中に、歴史が、統一が、あえて言えば全てが、
記されているではないか。
すごいなあ。
すごいなあ池田さんは。
改めて感嘆。
このような本を、この世界に残していただいたことに感謝。
というか、遺すべくして、遺された。
そんな気がしている。