久世光彦氏が、10年前に突然の飛行機事故で台湾の火焔山で亡くなった向田邦子さんとの思いを綴った本が2冊ある。
2冊の本を合冊したのが、”向田邦子との二十年”という本だ。
亡くなったのが52歳の時、20年来の付き合いであるから単純計算で向田さんは32歳。
久世氏は6才ほど年下ということなので、そのときはまだ26歳位であったのか。氏がTVの仕事を始めた頃なのであろう。
触れもせで、という文がある。
その20年間、仕事で何度も泊まることがあったということだが、一度も、手さえ、握手としてさえ、触れたことがなかったという。
だからであろうか、こうして深い思い出が本になっている。
1冊目の本の最後に当たる文の最後を引用しておく。
夢野久作の短編の題である”死後の恋”を引用し、自らを茶化しつつ、壮絶な告白になっている。この本を書いた理由、それが恋であったことの。
”だいたい、私たちが死んだ人についていろいろ拘るほどに、死んだ人というものは、私たちについてたいした思いを持っていないものだ。ただ、微笑っているだけなのだ” P.198
姉のようで、触れることもなく、思いがけず急に、目の前からいなくなった人への、一緒にいるときは意識することを避けていた思い。
久世氏もまた、2006年に鬼籍へ入られた。
- 作者: 久世光彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/04/08
- メディア: 文庫
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