マルチタスクというものがある。
これを私的には、意識上まで浮き上がっていないが、いつも気になっているもの、と認識している。
有名なところではローンだろう。
住宅ローンを組めば、「私はずっとローンを払い続けねばならない」と心の0.001%くらいのところでいつも考えている。
これはネガティブな気持ちだ。
もっと本質的には
私は歳を取る。
私は醜くなる。
私は病気になる。
私は死ぬ。
という、人間に不可欠な「生老病死」の諸相について悩む、という部分もあるだろう。
この悩みに向き合おう、ないことにしないでいたほうが逆に健康だよ、という知恵が、いわゆる「メメント・モリ」、死を想え、という日々の姿勢であろう。
そこに近いのが「宗教」、果たしてなんで私は生れたのか、自分はどこから来てどこにいくのか、というすべての人が心のどこかで持っているこの思いへの「対処療法」的仕組みであろう。
まあ、ローンに比べて、深く重いところではあるが。
それ以外でも、小さなささいな、卑近な例もある。小骨のひっかかり、だ。
私が最近気づいたのが、衣食住の「衣」。
まったく気にしない、というやり方もあるのだが、それには「マルチタスク」で「このまま外に出るとだれかに汚らしいやつだ、とおもわれないか」というストレスがある。
なので、「気にしない」はどちらかというとおすすめではないだろう。
むしろ、「気にしないでも、そこそこそんなにひどく無い、まったくお洒落ではない、むしろクールと思われる」そんな服装がいいだろう。
自身のキャラにあったものを、複数枚同じものをそろえて、清潔にしつつ選択の心理的負荷をなくす、というスタイルである。
いわゆる、いつも黒Tシャツにジーンズにする。ほかはない、という奴だ。
黒はいい。白よりも主張する。汚れは目立たない。しまって見える。安心する。
そう、個人的に思っているので、プライベートでは黒ばかりだ。
故向田邦子さんも黒好きで、「黒ちゃん」と呼ばれていたという。
最近はスーツもほとんど同じ色、同じ型である。ネクタイもほとんど紺となった。
このスーツのパンツに関して、ちいさな「マルチタスク」の解消が出来たのだ。
これがとても快適だ。
今までいわゆる「吊るし」のスーツを購入して、パンツ(ズボン)のウエストとヒップがあったことがない。腰骨がよこにとても広いので、勢いヒップがでかくなる。ウエストは腹筋を鍛えれば細くなる。
すると絶対に既製品は無理だったのだ。
ヒップ98センチ、ウエスト73センチだと、20センチの差である。
ヒップに合わせてパンツを買えば、ずって来ないようにベルトで締めあげるしかない。これをもう、何十年もやってきた。
結果として、ベルトは変なふうにゆがみ、パンツもへんな皺が出て、それが四六時中気になっている。
安いセミオーダーの店でスーツを作ってもらってから、これがなくなった。
まずベルト。ベルトが単なる装飾具になった。ぎりぎりと締め上げるためのものではなくなった。すこし緩めに止めても、パンツがずってこないのだ!
これは本当に快適だ。そしてベルトの変な変形も少なくなるだろう。
ずってこないように締め上げれば、腹回りの締め付けもけっこう厳しい。立っていればいいが、座っていると苦しい、というのもある。
これもなくなった。
そのことで、まるで住宅ローンのように、いつも心のなかでわだかまっていた思い、「ベルトが苦しい」「腹回りが美しくない」「ベルトが痛む」「ぎゅうぎゅうに締め付けている姿がいたいたしい」といった思いを、忘れることが出来たのだ。
類似のことはいろいろあるだろう。
意識して、その理由を見つけて、解消してゆきたい。