今週は、”孤独”について考えていたのだが、
高峰秀子の本、正確には高峰のことを書いた養女の斉藤明美氏の本を読んでいたら、欲望について書いてあったので、そちらに変更しようと思う。
”欲望は、海の水と同じで、飲めば飲むほど喉が渇く。”
自らの意思ではなく、5歳で子役になった高峰は、55歳まで50年間、300本の映画に出た。
女優、という仕事は大嫌いであった。
望んで行ったことはたった一つ、結婚、そのほかには何も求めず、ある意味深い諦念、絶望の中にあった。
斎藤氏は高峰を身近で見て、感じる。
”そして欲望は、生きる上での意欲になりうる。だが見苦しいのは、それが”過ぎた”時だ。” 同p.49
”人はたとえ無意識であっても、他者に「こう思って欲しいと求めるものだ。”同p.49
高峰は、映画、というその時代の人間の生きる欲が集中し渦巻く世界に半世紀も、いやいやながら、しかし完璧な仕事を残した人だ。
女優に群がる、ファン、親戚、は欲望にぎらつく目をしている。
それを嫌がることができないのも”女優”という仕事なのだ。
自らの美貌に恃んで女優となる人は、自ずから意識が変わる。その美貌の衰えを恐怖という欲望で嘆き見すえる。
高峰にはそれがなかった。だがそういう欲望が肉色にうごめく世界に50年いた。いきおい、自衛の技術が高まる。
それは”人に期待しない”こと。
嬉しいことがあると、それを喜ぶより先に、もっともっと、となる。
そうした僕のこころの”さもしさ”を、高峰さんに指摘してもらった気がする。
なんだか菩薩のような、人である。
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