藤子不二雄の単行本デビュー作になるのであろうか、「UTOPIA 最後の世界大戦」が発売当時の姿で復刊されたので購入した。
購入してわかったこと。
当時のマンガでは普通だったということだが、表紙絵は大城のぼるが描いており、藤子の絵ではなかったこと。また、色も本人によるものではなかったということだ。
児童書などでは、表紙となかの挿絵の作者が違っている場合があるように思うが、これは同じような感覚なのであろうか。
また、最後のコマは描き変えられており、藤本氏はそれが気に入らず、おおきくバッテンをつけていたそうだ。
今の感覚からすると、作者に伝えることなくこうした変更がなされる、というのは変な感じであるが。
こうした情報を得ると、また違った目で見ることになる。情報がないとわからない。
最後のコマはどのように書き換えられたのであろうか。本作のテーマに関わる重要なコマだと思われる。推測するに、戦争や人類に関する作者の思いが吐露されており、それが若干編集者にとって過激に思えたのではないか。であれば、全体の2/3を担当したという藤本氏がバッテンを書きたくなる理由もわかる。また、逆にいうなら最後のコマだけを描くようにいわれた別のマンガ家の思いはどうだったのであろうか。
現在刊行中の藤子F不二雄全集の第3期最後は同じUTOPIAだ。この作品が、もともとのものに戻されているのか、表紙はどうなるのか、興味があるところだ。
尚、小野耕世氏の指摘によると、この作品には女性が出てこない。生き物も人間とロボットのほかは出てこない(ロボットを生き物とカテゴライズするのはどうかという気もするが)。
読んでいて気にならなかったが、指摘されると興味深い。単行本デビュ−作であることも考えると、そのときの藤本氏のなかには、女性を描きたい、という欲求はあまりなかったのであろう。
本人が純粋に児童マンガを志した部分とあわせ、手塚マンガに憧れる思いが純化して、結晶化して出来た作品であると感じた。
- 作者: 藤子・F・不二雄,藤子不二雄A
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: コミック
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また、この復刊本が、松本零士氏が上京するときに持ってきた本をベースにしている、というところも、巡り合わせを感じる。
現在、手塚治虫「新寶島」と並べて本棚へ。ほとんど神棚級だな。
- 作者: 酒井七馬,手塚治虫
- 出版社/メーカー: 小学館クリエィティブ
- 発売日: 2009/03
- メディア: 単行本
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追記:合本されている作品の作者は、「中島利行」ということだ。