ファウスト、という物語がある。気が付くとそういえば僕がこのブログでタイトル絵に採用させていただいているのもそうであったのだ。
そんなことを思い出したのも我が敬愛する絵本作家、ホフマンの”くまおとこ”がめでたく再刊、されたからだ。
- 作者: グリム,フェリクス・ホフマン,酒寄進一
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1984/07
- メディア: 大型本
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正式には再刊、ではなく、別の出版社から別の名前で出たわけであるが・・。1984年に刊行された本書は、なかなか出会うことがなく、古本でも高額をつけていたため、エルンスト・クライドルフの作品と並び是非本棚に欲しい絵本の最右翼であったのだ。
- 作者: フェリクスホフマン,Felix Hoffmann,佐々梨代子,野村〓
- 出版社/メーカー: こぐま社
- 発売日: 2012/07/01
- メディア: 大型本
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悪魔、の表現が既に秀逸だ。”いやらしいろばの足”だったか、悪魔が雄山羊として表現されることからしても、ろばには気の毒ではあるが非常にイメージが溢れる表現だ。
悪魔は自らを悪魔と言うわけではない。しかし主人公は賢明にして慎重な男である。自らの勇気と意思の力を信じるものである。熊の皮を着て何年も過ごす。髪を切っても身を洗ってもいけない。
その姿は、いわば世間の目というものを気にしないで生きる、ということを象徴しているようにも思える。この場合でのPOINTは全てを自らの意思一つで耐えることができることである点だ。本質的に人を騙す必要はない。金はいくらでもある。人を表面で判断する世間、といものを知るために、逆に勉強にさえなるのだ。
期限が来た時、男は悪魔に身を清めさせる。いやいや従う悪魔も契約には誠実な態度でさえある。紳士な悪魔、なのである。
であれば”いやらしいロバの足”という風に行ってしまうのはどうなのだろうか。童話の世界では、例えばユダヤ人は全てひどい守銭奴に描かれていたりする。そんなことも思い出す。
悪魔を出し抜こうとした男の話といえば、ミッキー・ローク主演の映画”エンゼル・ハート”を思い出す。自らを騙すことで悪魔を出し抜こうとした男の話、といってしまえばそれまでだが、自らは記憶のない過去の自分に騙されてもいるわけで、その部分が個人的には非常に哀れに思え、映画や本を見終わったあと、気持ちが整理しにくかった。
そういう意味ではカタルシスの無い物語であるが、これはこちら、”くまおとこ”ではまさにめでたしめでたしとなる。
そうか、エンゼル・ハートで整理のつかなかった心があったから、この”くまおとこ”の話が妙に好きになったのかもしれない。
こうして文章を書きながら、思いついたことである。
いやあ、書きながら、考える。思いつく。
あまりないんですが、こういうこともあるのですね。
- 作者: ウィリアムヒョーツバーグ,佐和誠
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1981/02
- メディア: 文庫
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そして我が池田晶子さん!悪魔をもものともせず、論破してひれふさせそうである。というか、悪魔が存在に悩みそうかもしれない。
すごいことである。
同時期に同じくホフマンの赤頭巾も出ているようだ。こちらは未購入だが、是非手に入れたいと思っている。
- 作者: フェリクス・ホフマン,大塚勇三
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2012/06/13
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