ユルスナールの墓碑銘
人のこころを生ぜんたいの大きさにひろげ給うおん者に、
うけいれられんことを
本人が生前に選んだことばであるという。
須賀の生前最後に出版されたこの本の最後、須賀はこう記す。
もうすこし老いて、いよいよ足が弱ったら、いったいどんな靴を、はけばよいのだろう。
そしてこう結ぶ。
私も、ユルスナールみたいに、横でぱちんととめる、小学生みたいな、やわらかい革の靴をはきたい。
1929年生まれの須賀が1996年ころに記した文章。解説の多田 智満子もほぼ同年代の1930年生まれ。須賀のユルスナールを巡る遍歴を、”おいそめた”と記すことが出来るのは、その共感の故であろう。文庫版ではその後1年半後の須賀の逝去を悼む。詩人であった解説者もまた、2003年、自らの葬儀で出席者へ渡す出版物を自らアレンジして逝った。
凛、とした女性達の、背筋の伸びた生き方を思う。