近々研修を受けることになった。お題の本を渡されて驚いた。
なんとプラトン、”ソクラテスの弁明・クリトン”(岩波文庫)。
こ、これは。会社の研修と思っていたが。一瞬虚を突かれた。
そしてテーマ。なぜソクラテスは従容として死を選んだのかを考えよ。
おお、そうきたのか。
そのテーマ、既に考えていたよなあ。入試で予習した問題が出た感覚にちょっと似ていた。入試。いまだにそんなことを考えるんだなあ。
そのテーマ、ちょっと違うのは僕は池田晶子さんの”ソクラテス”を通じて考えたこと。ただし、池田さんのソクラテスは、プラトンのソクラテスと、魂においては同一人物だと確信しているのだが。
すくなくとも同じ人物がそのテーマならそういうね、という感じ。
AMAZONで池田さんと睦田真志氏の著書、”死と生きる”のレビューで、そのテーマで書いている。本ブログでも掲載しているのだが、該当部分、自分でも何を言ったか覚えていない(それはどういうことか?考えとは自分のものではないのか?考えは考えなのか?)ので、ここで復習の意味を込め該当部分を再録してみる。以下再録。
池田晶子さんの著書を読んで、なぜソクラテスが従容として刑死を受け入れたか、の理由に付き、考えた。1.自らの善を確信していたこと2.裁判とはこの世(=自分以外の)のルールであり、究極は自らの魂に何ら抵触しうるものではないこと。3.生と死は結局は地続きであり、差異は認められないこと。
自ら考えた理由はこの3つ。そして睦田氏の場合は、1.自ら絶対的な善を知る事を通して、自らの悪を深く納得・理解し、2.”公判の場は、決められたルールによってしか善悪を決められない、競技コートのようなもの(本書P.66)”という理解をし、3.生と死がメビウスの帯が如き同じものであると気づいた。
以上の理由により、刑死を甘んじて受けたソクラテスと同じ境地を見出した、ということであろう。
以上。
これを読んで思うのは、池田・睦田両氏により自分は偉く遠いところに連れて行ってもらったなあ、ということ。これこそ良書の力であろう。改めて両氏の仕事に深く敬意を感じるところである。
まあ、とにかく、そういうことなのだ。そしてソクラテスの死の理由は、たぶん誤解されやすい。何かきちんと法を守るヒト、法を守ることは重要だ、という方向に、ついつい理解は走ってしまう。
そこのところは、実はひとつのソクラテス(プラトン)の残したひっかけであって、そこでひっかかってでもなぜなんだ?となるような装置でもある、という気がしている。
お題はこれで自分の答えはあるわけだが、折角なので、もうちょっと考えてみましょう、ということで、これまた池田さんの”2001年哲学の旅”を引っ張りだす。ぱらぱらめくると、ほら、毒杯のことが、書いてある。
プラトン そう、嘘つき、大嘘つき、とにかく始末に負えない嘘つきなのです。この嘘つきめ、真実を言えと問い詰められりゃ、僕は知らない、知らないことしか知らないんだなんて、平気で吹いてみせるんですからね。こんなのって、ありますか。しかも、その真実の嘘をつき通すためなら、毒杯くらいは屁でもないんだ。後の世は残らずあれに騙されてるんだから、あの人は人類史上最大の嘘つきだと言っていい。
クサンチッペ なんだかよくわからないけど、要するに、騙されないように気をつけろってことね。
2001年哲学の旅 池田晶子 P.145
ああ、早速これだ。これだから池田さんは。ほら、ここに、ここに書いてあるよ、と指し示された気分である。ソクラテス、といえば嘘。死も真実を裏から示す壮大な嘘、にしてしまった、ある意味意地の無いように見せた強烈な自我。
そしてそのような魂のありかたに、強烈に惹かれたヒトが池田晶子という魂であったのだなあ、と改めて思うのである。
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