夢見るように、考えたい

池田晶子さんの喝、”悩むな!考えろ!”を銘としております。

最近の本選び。

最近の本選びは苦しい。

もう3年にもなるか、(2008年3月23日とメモにあったからもう4年目だ、早いものだ)中古住宅へ移り住んだ。社宅取り壊しを受けてだが、前の住まいと比較的近い場所である。僕は神戸生まれなので、名古屋の土地の考え方はあまりわからなかったが、いわゆる下町地区だ。とにかく洒落た店はとんとみつからぬ(今ひとつ味のある店もない)。だが、考えてみると神戸住まいの時も六甲に住んでいる人にこんなところは神戸じゃない、と言われてショックを受けた。しかしある意味笑ってしまった。こちらは紛れも無い神戸市民、向こうは神戸市民じゃないよな?。まあしかし、そのような特権意識があることを感じた一瞬ではあった。ことさら悔しくはなかった。しかし理不尽だなあ、と思った。

住まいのことを言いたいのではなかった。今の家は中古住宅で前の持ち主は老夫婦だった。だんなさんが亡くなって奥さんがマンションに引っ越したというわけだ。3畳ほどの小さな部屋がある。ここを自分の部屋とした。このことだけでもずいぶん先住者には感謝している。ここで面などを打っていた、とも聞く。そうかアトリエか。

庭作りにも意思を感じる。枯れ山水だが、所々に宿根草、それも基本的に日本原産のものが今も芽吹く。鈴蘭、つわぶき、ホスタ。特にアサガオはこれはもう木となっているほどの大株だ。昨年松に虫がついて枯れてしまった。見事な芽吹き色を見せる美しい木だったのだが。虫の発生を見てあわてて殺虫剤を撒いたが、間に合わなかった。殺虫剤、というのはあまり好きではないのだが、そうは言っていられない事態があるのだ、ということを教えてもらった。

そんな部屋であるがなにしろ3畳だ。持ってきた数十箱の本のダンボールはほとんどそのままに、3列ほどの書棚を作り、前の家から持ってきた書棚も使い、でまあまあ本が入れられるスペースを手に入れたわけだが、一杯になった。

まあそのときの購入基準が、”これは読んでおいたほうがいいなあ”と感じたら(当然価格とも相談し)条件が合えば購入、という感じであったので、これはBOOK OFFの105円コーナで文庫に落ちて安くなった単行本や、岩波文庫なぞは結構買った。そしてはまったのが絵本蒐集。これがいたい。絵本というのは結構かさばるし、大きさが結構バラバラだ。前は絶版漫画(といっても結構高価であるのであまり買えず=あまり増えず)といった感じではあったが、今は幼児たちが読み終わった名作をガンガン購入しているというわけだ。

絵本というのはページが少ない。絵も少ないのだ。そのなかで作者の絵に対する思いは即座にばれる。隠せない。僕は漫画でも絵で買ってしまうところが多いので、1枚の絵に書ける執念が漫画より格段に時間のかかっている絵本に魅入られるのに時間はかからなかった。

英語ではPICTURE BOOK。文字通り”絵の本”だ。古い外国物が多くなるのは、幼児期に見た記憶も勿論影響している。そういったものを与えよう、としてくれた先人の意思もある。石井桃子矢川澄子瀬田貞二堀内誠一。素晴らしい先人たちの提案は確かに素晴らしかった。更に絵本は絶版が早い。幼児に受け入れられなければ再版はおぼつかないのだ。その中で何十版と版を重ねている本を手に取るたび、”これはかわなあかんな”、という声が僕の中に鳴り響く、というわけだ。

そんなこんなで本は増え、もう一杯になった。今は平積みだ。こうなるともうなにがなんだかわからない。こんな本あったっけ?あったような悩んで買わなかったような。

というわけで、今は本を買ったらなにか他の本を処分してまで購入価値があるのか、という視点が残念ながら入った。考えたらこれは普通の視点だろうとは思う。仕舞う場所が潤沢にある、というのはなんという贅沢か。失ってわかるこのシアワセ。

とかなんとかいいながらもこのGWは古本屋を訪ねよう、と思っている。住まいが下町だなあ、と思うのは、このあたりにいい古本屋がないことだ。おお、これは!!!さすがに高い、眼福だ、いつか買うぞー!!!というような本が鎮座ましますのが僕の好みだ。そんな本屋はトンとなし。まあ電車に乗って一時間もすればあるのだが。勿論神田の古本屋街とはいかない。しかし結構楽しいところが。

そこで厳しく自問自答しながら本選びをするのだ。いわばこれは本好きのアタリマエの姿。置き場所があることのほうが異常だ。なくて当たり前。積みまくるかどうかの選択肢は残るが(残るのか?)いずれにしても自分が座る場所は必要だ。物理的限界がある。出演者を選ぶオーディションに臨む映画監督にでもなったつもりで臨むのだ。

しかし古本で辛いのは”一期一会”。ここで出会ったが最後、もう二度と出会えないかもしれないのだ。この反対勢力からのコメントが手ごわい。悩み疲れてぐったり、費用節約のため喫茶店で釣果をためつすがめつ、という愉しみも採用していない僕なので、そうなったら”疲れ”を利用して”もうどうでもええわ”という境地に自らを追い込むしかない。これが疲れる。

まあ、そんなハタから見れば滑稽至極な葛藤こそ古本三昧の一番の愉しみ、ということなのだろう。そんな経緯を経て入手した一品、これを愛でる愉しみこそジャングルの奥地に絶滅危惧種の蝶を追い求めるマニアや、これまた未開の地に西洋には未紹介の種を探した全盛期英国のプランツハンターの気持ちと合い通じるものがあると思っている。スケールは若干違うのかもしれないが。。

というわけで、行ってきました。昨日お邪魔したのは鶴舞駅前の大学堂さんと、名古屋古書籍商業協組さん。後者は東北支援のイベントを最近実施されたようだ。自粛というなの人のための振りをした自分を守る意識の所為で、経済活動は滞っているというこのGW,自分は好きな古本購入で協力だ、というのは言い訳か。

初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)

初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)

美術の解剖学講義 (ちくま学芸文庫)

美術の解剖学講義 (ちくま学芸文庫)

私の美男子論

私の美男子論

以上大学堂さん。

イメージの狩人―絵画の眼と想像力 (1972年) (新潮選書)

イメージの狩人―絵画の眼と想像力 (1972年) (新潮選書)

そして本日の池田さん。

悪妻に訊け―帰ってきたソクラテス

悪妻に訊け―帰ってきたソクラテス

昨日行った店で初めて会った池田さんだ。以上2点は名古屋古書籍商業協組さんの100円コーナーであった。池田さんはなんとなく単行本版を持っていなかったような気がして購入したが、やっぱり持っていた。

しかし、本はその作者の魂が分けて入っている、という感覚がすごくするので、仕方ないんだよねえ・・・。

金枝篇”は上下で900円。AMAZONでは単品で750円以上するようなので、いい買い物だった。森村氏の本は面白いのであったら買うようにしている。380円。まあ、AMAZONで送料を入れたらOKか。

モリマリさんの本は500円。AMAZONでは2000円近くしているので、よい買い物であった。モリマリさん本は、BOOK OFFの105円文庫コーナで探すがあまり見ない。この本は写真も作りも、よい本であった。坂崎さんの本は、クラナハのページがあったので購入。