「土と植物を相手にする仕事は、瞑想するのと同じように、魂を解放させてくれるのです」 ヘルマン・ヘッセ
先週、大きめの鉢と、コンテナ型の陶製の鉢を2つ買った。現在の家が中古で、前の持ち主が作った庭の木々や草をことさら取り替えるのはやはりよろしくないだろう、という感じがして、所々空いたところや、玉つげの下あたりに、アイビーをちょこちょこ植える位で、そのほかは草むしりが大きな作業になっていた。
しかし、どうも余り面白くない。前出のヘッセ”庭仕事の愉しみ”P.13にもあるとおり、”園芸には創造のよろこびと、創造者の思い上がりといったようなものがある。私たちはわずかばかりの土地を、私たちの考えと意志にしたがって形づくることができる”のだが、前の持ち主の純和風の草たちの風情は素晴らしいものの、創造の感覚は未だ得られぬままであった。
前の社宅から持ってきた(元は実家から持ってきた)ラベンダーの株が暑さと水切れで殆ど瀕死状態に陥ったのは、それを地植えする場所がどうしても見つからないことも一因であることに気が付いて、であればせめて大きな鉢をつつましい門の前に鎮座せしまして、植えればどうであろうか、と思ったのが直接のきっかけともいえるであろうか。
小遣いを握りしめ(いや、実際は財布に入っているし、足ではなく車での移動ではあるが、そのような気持ちではあった)、向かった植木屋(ま、チェーンのショップなので、個人の店主、という感じではないが)で安くなっていた鉢類を思わず3つ購入したことは、前に日記に書いたような気もする。
それと土を購入するだけで、エネルギー(と”金使い力”=余りたくさん金を払うと罪悪感が出るようになったようだ)を使い果たして、そこに植えるモノは購入せず(出来ず)、とりあえず門の前に設置したのが先週までのお話(?)。
とまあ、なんとも浮ついた文章をごらんの通り、何を植えようか、と考える1週間が愉しくなかったというとうそになる。大きくて重かった割には余り植える面積は広くはないが、まあ少しは植えられそうである。
昔子供に買った絵本に、バーバラ・クーニーの”ルピナスさん”という話がある。長らく絵本に関しては余り知識が無かったので、知らなかったが、このクーニーという作家は、アメリカでは大変な大御所であった。なにかこの世に残したい、と思ったとき、町にルピナスの種を蒔いて歩き、ルピナスの生える町に変えた、という話であるが、妙に最近再読してみて気になったのは、年齢の所為もあるかもしれない。
それもあって、昨日再訪した花屋で、ルピナスの種を購入。狼、の意で、結構強い草でありそうなのが気に入った。本当はラベンダーを買おうと思っていたが、こういうのはシーズンとタイミングがあるようで、ハーブ類は余り売っていなかった。
そしてメインで購入してしまったのが、ツボサンゴことヒューケラ。アメリカ原産で、ユキノシタ科の植物だ。
気に入った理由は”とても丈夫で育てやすく、植えっぱなしでOK!の植物です”という惹句に惹かれてのこと。ラベンダーを瀕死にし、傷んでいる心に染み入った、というところである。
手にとったのは、”Fire Fly”という品種であったが、ふと見れば同じ植物の葉っぱの色違いがあるのに気が付いた。”Dale's Strain"と”Stormy Seas"。売れ残りか、草にしては高い680円と880円。それだけに希少品かと思ってしまうのはなんなのだろう。しばし思案、更に横にも発見、”Chinnabar Silver"。
同じ種類でたくさんの葉があるのは、非常にコレクション嗜好をくすぐられる。で、買ってしまう。
そのとき感じたのは、古本屋と同じで、生ものを売っているこうした植木屋に並んでいるものも、結構一期一会なのだなあ、ということ。前にたくさん並んでいたヘデラ(アイビー)は殆ど見かけなかったし、安売りの鉢は全くなし(ま、当たり前か)。
又まめにのぞかねばな、という世界を見つけてしまった。
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