週刊新潮掲載時のタイトルである。
なぜ人は死を恐れるか。
”自分が死ぬと知って絶望的になるとは、死ぬとはどういうことか知っていることになるからである。しかし、生きている我々は、死ぬとはどういうことなのか、知っているはずがないのであった。あるいは、ひょっとしたら、死ぬということは、生きているより希望的なことであったとしたら、どうだろう。人類の歴史は、根底からひっくりかえるであろう。”
考えることに、手遅れはない。とオビにかかれたこの本を図書館でなにげなく手にとって借りたことが、広く池田さんの本に接するきっかけになった。
そういう意味では思い出深い本である。
同行二人。
個人的には旅行や散歩の時、携帯した本の作者と一緒にあるいている感覚がある。
今朝は池田さんの本。この本の最初の項は、この連載で池田さんが言いたかったことだろうということで、上掲しておいたが、実は最後の方の愛犬に関する項、を読んで、なんともいい気分になって散歩を続けたのである。
”堪え切れず噴き出してしまったのを、彼の犬を撫でることでごまかしつつ、改めて私は感動した。犬の力は、やっぱりすごい。人間の心を、完全に無防備にしてしまうのである。”
僕の好きな部分だ。散歩のはじめ、こちらも散歩中のヨークシャーテリアが僕に駆け寄って来てくれた。まあ、おいでおいでといい、しゃがんだら大体犬はくるのだが。
犬に会うと、知らない犬でも、しゃがんでなでて、犬の年を聞いたりする。この流儀は母親ゆずりだ。
噴き出したことを、犬を撫でる事でごまかしきれたのかな、と思って、その情景を頭に浮かべつつ、歩いた。
川べりの除草がされていて、景色が変わった。
緑が濃くなってきた。
向こうのそらから、天頂を超えあちらの空に続く飛行機雲を真下から眺めた。
空は永遠で無限であり、果てが無い。
無限が常に頭上に接している不思議。
41歳からの哲学 池田晶子 新潮社 刊
- 作者: 池田晶子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/07/17
- メディア: 単行本
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