池田晶子さんの絶筆がなんであるかはわからないが、平成19年3月1日号の週刊誌に掲載されたこのエッセイが殆ど最後のメッセージであろうと、個人的には思っている。
”例年になく暖かな季節の巡りの中で春一番が吹いた日に、ふと、寒い混浴の温泉場のことを思い出す。”
息が苦しくなり、最後は酸素を手放さず書いたという池田さんの姿を知らずに読むと、例えば”今回の文章は池田さんらしくない”といったような感想も、ネットで掲載されていた。
とてつもなく冷え性だと言っていた池田さんが、2月の病床で、春一番を感じ暖かさも感じていた、ということを思う。
そのときの池田さんの気持ち、苦しい中、或る意味しんとした、馳せる思いの中に在ったのではあるまいか、そんな風に思ったりするのである。
- 作者: 池田晶子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (35件) を見る