ほぼすべての池田さん単独名義(一部文庫化本は除く)を、
池田さんの”魂の発現”、あるいはハリーポッター的に言うのであれば”分霊箱”として所持させていただいている僕であるが、
唯一、といっていい不所持の本であったこの本をアマゾンにて古書価にて購入した。
実はこの本の購入は、絶版本であるが故に高価であること以外にも著者自ら絶版した(とご本人が書かれている)ということもあり、躊躇っていたものではある。
だがしかし、うらわかき池田さんが鮮烈に文壇デビューされた(まあご本人はそんな気はお持ちではなかったかもしれないが)いわば歴史の香気を嗅がせていただくよすがとして、またそうした事実をいまこの手で自ら掴める(個人的に古書の魅力とはそれが大きいのである)ということにかてて加えて(笑)、
例えば池田さんご自身が敬愛する小林秀雄への手紙の中などで述べられているとおり、小林がいわば完成に辿り着けなかったベリクソン論を国会図書館(いや、慶応の図書館だったかな)に閲覧に向かわれたように、そして”なまなましき小林の苦吟”に雑誌ベースにて接し実感されたがように、
不肖私めも池田さんの”処女作にして鬼っ子作”でもあるこの本に、いわば引き寄せられ入手させて頂いてはいけないのか、いやいいのではあるまいか、と
なんだか妙に力みながら購入に至りました、という状況でございます。
まあ、実を言わせていただくのであれば、海外出張で頂いたJAL搭乗の付与ポイントで、AMAZONさんのポイントに変換が出来る、そしていや1万円相当、という事実が急にわかり、
ここはもうあの本しかない、といわば少しく運命をも感じながら(いや大袈裟)
ありがとうJALさん、そしてすみません池田さん。
。。。ということで手に入れさせていただいたのが実態なのでございます。。。
そして今回の購入でのもう一つの魅力は、この本、オビ付きであることである。
オビだけをコレクトされる方があるように、オビの惹句にはなんとも言えない味がある。工夫がある、苦吟も、ある。
さて、この本の惹句のみ改めてここに書いてみる。
”埴谷雄高の精神と思想を
最高の位相において
継承せんとする
若き哲学徒による
清新な思考のプリズム
新たな思想の胎動を告げる
話題の評論集”
この惹句、もしかしてこのあと池田さんともめて絶版に至る原因ともなった編集者のかたがもしや頭をひねらせたのかしらん、などと考えるのも一興か。
そして裏面オビ。
そう、東京新聞にご本人である埴谷雄高氏自らが批評された文書が掲載されている。
いや、これは豪勢だ。
「文学の文体で書かれていないのがマイナス点だが、全く作品だけで、しかもこれまでの批評家のように哲学者の論理に私を合わせてしまうやり方ではなく、私の論理を証明するため、哲学者をうまく使っている。
こういう正攻法の批評は従来全くない。これを女性がやったということに驚いている」
(段落は変更させていただいております)
いや、埴谷さんのヨロコビが溢れているではないか。
これはいい。
読んでいて、こちらも嬉しくなるようだ。
個人的にもこのとき池田さんをたぶんご存じではあったろうが、まな板に誤って載せられ続けてきて、そして黙って料理されてきた極上の食材自らが、こころから、正しく、料理されるヨロコビを感じている風情、などと申し上げると言い過ぎか。
いや、たぶん、大丈夫だ。
池田さんと埴谷さんの邂逅は、池田さんが小林秀雄に直接出会えなかったこの世の不幸を、だいぶ和らげているのではあるまいか、とかねてから感じていた。
池田さんも、たぶんそのように感じてらっしゃったと思っている。
さて、ではこの本、本文の書き出しを”写経”させていただこうか。
「何が思索を命じるか」とハイデガーが問うたとき、二千年の「忘却」の歴史を超えて、初期ギリシャの哲人たちが、そこに甦った。そして、「死霊」七章の補遺「《最後の審判》に添えて」において埴谷は言う。二十世紀の三輪家の兄弟の負った課題を少数の読者は感じてくれるであろう。そしてその少数の読者は、「存在」そのもののはずである、と。
P.007
香気ここにあり、だ。
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