空海曰く。
生まれ生まれ生まれ生まれて、生の初めに暗く、
死に死に死に死んで、死の終わりに冥し。
物語とはなにか。
世界で一番古い作者がわかっている物語は、紀元前800年前のホメロス。”イーリアス”は15000行、”オデッセイア”は12000行ある。そしてホメロスは盲目の語り部であった。
(P.69 松岡正剛 17歳のための世界と日本の見方。以下同書より)
物語には母型がある。シンデレラで800近い。日本では信濃川流域で6種。「米福・粟福」姉妹の話が有名。英雄伝説でも母型は一つである(ジョセフ・キャンベル、米神話学者)。
その共通構造とは。
1.主人公の旅立ち。セパレーション。家を出たり、故郷を離れたり。
2.通過儀礼。さまざまな艱難辛苦に出会う。イニシエーション。
3.意外な人物による助言。みすぼらしい老人、最初は敵と思っていた人物、不思議な力を持った老人。
4.「隠れた父」との出会い。幼い頃生き別れた父親。敵の親玉が実は父であった。或いは意外な人物との出会い。本当の母親や結婚相手や親友との出会い。
5.闘い。必ず主人公は勝つ。
6.帰還。リターン。その場に留まるよう勧められる。主人公に救われた王に頼まれる。姫と結婚してくれ、等。主人公大いに迷うが、振り切って故郷へと帰る。
以上、セパレーション、イニシエーション、リターン。
セパレーションでは、冒険に出る動機が語られる。決心がつきかねるときに、強力な助言者出現。出発すれば最初の障害、それを越えるとうんざりする旅程。
イニシエーション(冒険)では、色々な試練を受ける。女神、異性の誘惑。自分が知らなかった父親像や血の血統を知る。想像もつかないアナザーワールドがどこかに実在するらしいことを知る。ユートピアなのか、悪の帝国なのか。
リターン(帰還)では、主人公はそこから帰らねばならない。ピノキオはクジラの中から、浦島太郎は竜宮城から、ヘンゼルとグレーテルはお菓子の国から、桃太郎は鬼。いろいろな呪文や謎を解き、助けてくれるものを信じる必要がある。
大団円。
それを利用したのがジョージ・ルーカス”スター・ウォーズ”。レイダースなども同型。
もともとは神話。日本のドラマでも、野島信司"ひとつ屋根の下”、”高校教師”、”プライド”。橋田寿賀子”おしん”、”渡る世間は鬼ばかり”。シンデレラ型。
紀元前600年ごろは、宗教、哲学、定理をまとめるような動きが出る。
ゾロアスター教、ユダヤ教をまとめた第二イザヤ、エズラ、ネヘミア。インドではジャイナ教のマハーヴィーラ、仏教のブッダ。
中国の老子、孔子、荘子。ギリシャのピタゴラス、ヘラクレイトス。
これは国や都市の出現、民族間の侵略や戦争と言ったことが臨界点に達することによる「創発」。
そこから神の物語の伝承のみではなく、「神の予言」「預言」が出てくる。また神の意思を確実にするための「約束」、神と人間との「契約」の概念が出てくる。
この”預言”と"契約”により宗教が民族や国のアイデンティティそのものとなった。世界の情勢の問題の根っこ。
今後は、より激しい宗教的な「文明の衝突」が起こる。キリスト教とイスラム教、仏教や儒教の激突。
ゾロアスター(ツァラトゥストラ)は光の神(アフラ・マズタ)と闇の神(アンラ・マンユ)に分けた。
以上引用。
編集工学を提唱される松岡氏の語る歴史観は、相互の関係に主眼が置かれている。それが世界史を鳥瞰するのには非常に有効である。氏は編集ということを通常の意味から広げて関係を作ることであると説く。正にパーツパーツであり相互の関係が不明瞭であった世界史の事件が主に精神史の視点であたかも星座のように関連付けられる。まさに目くるめく思いがする。
こうした歴史観を早い段階で得ることができることは非常に有用であろう。
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