夢見るように、考えたい

池田晶子さんの喝、”悩むな!考えろ!”を銘としております。

ユング。

積年の探求書である、河合俊雄著”ユング”を購入。

池田晶子ファン、を自任する身としては、池田さんが”ユングとはこんなに面白いのか”と感じたきっかけであると書かれた本書をいつかよまねば、と思っていたのであるが、古書価格が高いのがネックであった。

現代思想冒険者たち、と銘打たれたシリーズの1冊である本書は、1998年の刊である。定価2524円。確かにこの本の流通量が多くなさそうであることは、改めて感じた。

少し難ありの条件であったが、1500円程度で出ていたので、勢いで購入した。個人的には古書で1500円は厳しい価格だ。Amazonなので送付料も掛かる。2000円近い価格であるのだが、本には良書、とも言うべきものがあり、買わねばならぬ出会いがある、なぞと妙な念仏(この念仏に魅入られると、本をジャンジャン買うことになる)を唱えながら購入した。

カール・グスタフユングは、フロイトから袂を分かって個人を超えた無意識を強調して、独自の心理学、心理療法の理論をうち立てた。個人的な人間関係や因果関係に還元せず、イメージの象徴性を捉えようとするアプローチの仕方のために、心理療法に限らず、文学、宗教、芸術など、様々な分野に影響を与えている。”

しかし、ヨーロッパやアメリカでは”その神秘主義的で非合理的なところ”から、アカデミックな世界では余り取り上げられていない、とのことだ。

”しかしユング超心理学錬金術、宗教など、神秘主義的に思えることを取り上げざるを得なかったのは、どこまでも自分の触れていた魂の現実性(リアリティー)に忠実であり、またそれを表現しようとしたためではなかろうか”

””部は、同書”まえがき(P.0−1)より引用

フロイトに出会って池田さんがその個人に根付いた理論に納得できず、ユングを知って心理学を見直した理由がよく分かる。なにより”魂”の探求者というスタンスは両者に大きく共通する部分であるだろう。

”生物進化には何万年もかかる。それが常識だ。けれど北(注:北一輝)は、人の次の進化が目前と信じた。わずか数世代で人類は神類に転生しうると考えた。
 神類とは何か。人間は基本的にエゴイスト。が、猿の群れでも強調性に富む方が勝ち残る。エゴイストは淘汰される運命だ。そして現れるのが、個を捨てて平等を求める神類。要するに社会主義的思想を先天的に宿す生物だ。肉体も変わる。北は神類とは性交も排泄もしないという。”

昨日の読売新聞読書欄での片山杜秀氏の書評、”北一輝 国家と進化 嘉戸 一将著”からの抜粋である。

”北の革命の理想はプラトンの「国家」と著者は言う。「国家」は軍隊に守られた哲人政治による国民の私益放棄と公益追求を説く。”(引用:同上)

池田さんは、人類がこの先滅びようと生き延びようとどうでも良い、といった。ただ、1000年先の人類に対する言葉を述べているとも言った。

危険思想、とはなにか、社会主義、というものが前の時代、なぜかくも力を持っていたのかを垣間見た気がした。その後の”社会主義”の顛末を知っているから、そのスタートはいけないものだ、と単純にこれまでは感じていたが、思想はいいが、エゴイストである人類に骨抜きにされたがゆえの社会主義の失敗か、という視点を貰った気がする。思想革命、とはこういったところから出てくるものなのか。

ユング―魂の現実性(リアリティー) (現代思想の冒険者たち)

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北一輝――国家と進化 (再発見 日本の哲学)

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