合わせて、なんというかイキオイで、矢川澄子特集(ユリイカ)もアマゾンに注文した。
関連したものをドーッと買う、というスタイルだ。
単に堪え性がない、ともいう。
しかし、僕はこのものを買うときのイキオイ、というものを結構重要に思っている。モノを買うにもエネルギーがいるものだ。
鎌倉の文人、というと、現名古屋在住で、東京(というか神奈川)に住んでいたときに鎌倉に行ったのかもしれないがキオクにない、という条件に於いて、小林秀雄と澁澤龍彦である。なんというか、観念上の鎌倉に住む2大仙人、といったようなイメージを勝手に持っている。
今気づいたが、両者のイメージで似るところは、女性との関連でもある。小林秀雄は、中原中也の愛人、長谷川泰子との同棲があり、澁澤龍彦の場合は、矢川澄子との離婚がある。小林の場合はその苦難が垣間見えるが、澁澤の場合は、その年譜から矢川のことを消してしまう、という行為の裏に、これまた深い闇を感じる思いがする。
1976年発行の加藤郁乎”後方見聞録”に加藤と矢川の不倫の告白があるとのことであるが、いわば戦友のような矢川との関係を考えると茫漠たる思いに囚われる。
矢川澄子については、そういう意味では数々の絵本や児童書の翻訳を通して、実は一番小さいときから身近に居た人であったことに気づいた。例えば気に入っているエルンスト・クライドルフの花の小人の絵本、"花を棲みかに”も矢川の翻訳だ。金子国義が挿絵を描いている新潮文庫の”不思議の国のアリス”も矢川の翻訳だ。
小林も澁澤も、その後結婚した婦人はどちらかというとつましいイメージである。いわゆる一般の人、という感じがする。そんなところでも印象が重なる。
小林秀雄からの連想では、やはり白洲正子であろう。最近すっかり有名になった白洲次郎は、神戸の出身であるところに、親近感がある。そして洲之内徹。絵の好みは、僕はやはり荒俣宏の妖精画廊が高校生の時のバイブルであったので、それとは方向性の違った絵を選ぶ洲之内の本で、幅広い絵の世界を見せてもらった。
荒俣といえば、澁澤を魔王として慕った、というのも繋がってくる。そして三島由紀夫。髑髏とオウム貝が鎮座する澁澤のキャビネットほどではないが、篠山紀信が撮った三島由紀夫の家のなかの装飾の好みは、学年で4つ下の澁澤の趣味と、根っこの所ではひどく似通っている。
澁澤絡みでは、前出の金子国義。同じくコロナ・ブックスの"金子国義の世界”を読むと、澁澤に見出されて有名になるきっかけを得た金子の、澁澤に対する思いが伝わる。下宿に来た澁澤に、インスタントラーメンを作って喰わせた、というエピソードが愉しい。インスタントラーメンがご馳走だった頃。
考えて見ると、小林秀雄と澁澤龍彦は同じ東大仏文科の同窓でもあった。小林が1925年4月、23歳で入学しており、澁澤は1949年頃のはずなので、20年以上の差はあるが。
両者の文章から受ける印象はずいぶんと違っているが、底を流れる硬質できっちりした感じでは共通するものもある気がする。
下に貼り付けた澁澤の本と矢川の本。足を組んだ姿勢、一色に染め上げた意匠、元夫婦の共通点が図らずも示されているようだ。
澁澤龍彦事典―Encyclopedia Draconia コロナ・ブックス (9)
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ユリイカ2002年10月臨時増刊号 総特集=矢川澄子 不滅の少女
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