名古屋へは社会人になってから来た。当然名古屋生まれの人が知っているような名古屋での基本的な情報が無い。
例えば本屋。新刊書店の場合、どうしても大きな本屋へ行く。
今ならJR高島屋の三省堂か、名古屋駅のジュンク堂。テルミナにあった三省堂がその前はメインであったが、今は改修中で、前述の2店が中心だ。
それらの本屋に文句は無い。新刊は有名どころはあるし、新聞広告に出ているような本はすぐ行けば買える。例えば池田晶子さんの新刊は、上記の2店であれば買える。既刊本もほぼすべて揃っている。安心できる。
両店ともワンフロアであり、巨大な店、というわけでもなく、圧倒される物量、というわけではないが、これも両店とも座って読めるイスもあったりする。
夜の営業は、高島屋が8時、ジュンク堂が9時、とちょっとものたらないが、新刊書店ならこんなものかもしれない。
という状況であった。必要なものをきちんと提供いただく、というのは素晴らしいことだ。しかし、時間が無いときは、どうしてもAMAZONとなる。送料が無料であれば、場合によっては電車賃が要らない分、時間も費用もセーブできるのである。
他にビレッジバンガード、というのもある。ヴィジュアルやサブカルチャー系の本が面白い。人文系、なんというか大学生向けの人文本、といった趣の本も結構入っている。
あとはBOOK OFF。あまり古い本は無いし、どちらかというと、大型店のほうが客も多い分掘り出し物が少ない印象がある。又たまに東京であしを伸ばして見ると、東京では賃貸料が高いのか、価格も比較的高い。場所によって、出てくる本が違ったりするのは面白いが、どちらかというと、DEEPな本は少ない印象だ。例えばみすず書房あたり、神谷美恵子のメジャーなところ(こころの旅、生きがいについて)、夜と霧(旧版)などはたまにみかけるが、ユング自伝あたりは東京で2冊セット(!)で見たくらいだ。それも半額。まあ、半額なら安いのだが、105円コーナでは見たことがない。白水Uブックスあたりは、良く探せばたまに出てくる。須賀敦子などを探したりするのは面白い。
まあ、しかし、ブックオフはブックオフの愉しみがあるが、やはり流れ作業になってしまうのだろう。そこに店主の好みや慧眼、経験がにじみ出るようなところが楽しいのが旧来の古本屋である。名古屋では鶴舞あたりに数件あり、各店で力を入れている方向を感じながら楽しめる。
この夏休み、家の近くに小さな古本屋を発見した。SF、幻想、版画、ミステリ等に力を入れているということで、そのあたりは昔僕が学生のころ特に好きであった分野であるので、とても懐かしい本達に遭遇した。学生のころは食うや食わずで買えなかった本(国書刊行会系の魔術書等)、そろそろ買うべきですよ、という流れなのかも知れない、と思ったりした。
近くにそうした本屋があるのは、楽しいものだ。実は大型店ができたあおりが、最寄のブックオフが閉店してしまい、寂しい気持ちでいたのだが。
前振りが長くなった。一昨日、田中栞さんの講演があり、参加した。武井武雄展で、武井の豪華本や豆本の解説を行う、ということで、来名された。
講演を聴いての印象、貴重な機会、わざわざ豪華本を講演のために購入(そんな言い訳が欲しかった、というところもおありになると睨んだが)、ということであったが、一番感じたのが本というものへの愛情。ご自身、古本屋の女房、であったと思ったが、とにかく本が好き、という思いが全身から発せられている。これが一番の印象だ。
本は一期一会、新刊といっても下手すれば1週間しか置かないこともある。とにかく見つけたら買っておくこと。
新刊本も買ってください、アマゾンばかりではなく。
といったご発言は、本を取り巻く世界を愛し、育てたいという思いの発露であると感じた。そこで出たのが”なごや正文館”。名古屋で大好きな本屋だ、と言って紹介されたのだが、とにかく名古屋の文化状況に全く疎いので聞いたことがない。だが、本好きのこの人が薦める本屋、なにかあるに違いない、と思ったのである。で、早速翌日である昨日、行ってきた。
なるほど。
どうも裏口の新刊話題本コーナーから入ったようなのだが、で、その瞬間は、”あれ?”だったのだが、奥へ進むとDEEPなコーナーが。宗教、哲学、心理学のコーナー、何らかの流れで、”これに興味ある方、こんな本もあるよ”という言葉がこころの中に聞こえてきた。
新書もたぶん買えるものは番号順に並んでいる。この広さであれば、結構無理しているような感じだ。そして中央から逆サイドのコーナーへ。ここらあたりがメインの棚なのだ、とわかってきた。熊田の絵本関係の本が数冊並んでいる。そしてユリイカの既刊が所々に差し込まれている。矢川澄子・不滅の少女。なぜこれが?と奥付をみると、増刷されたようだ。森茉莉特集もあった。洲之内徹の小説全集。本屋で売っているのを見るのは初めてだ。おお、バトラーの”魔法修行”もある。これも新刊書店で見ることは稀だろう。
マンガも厳選されている。つい唸らされる棚だ。知らないと作れないだろう。お約束の澁澤コーナーもあったが、そこにさりげなく差し込まれていた関係のなさそうな本をつい手に取ってしまう。なぜここにこれが??で、結局その本を買ってしまう。映画や美術も充実。サブカル系も深いところが押さえられているようだ。球体人形とか。
いや、時間が直ぐに経ち、2時間近くになってしまう。これはなるほどすごい店だ。さすが本好きのお薦めの店。
印象としては、店主の好みの入った古本屋と同じ臭いがした。本のコンシェルジェ、という印象だ。いや、これがブックオフだったら、20冊くらい買うところだ。いかんいかん、本は一期一会でしたね、田中さん。財布と相談して結局3冊、ハリークラークの挿絵本と、コロナブックス、新潮新書を計約5000円で購入。置き場所を考えたら今後本は厳選せねば、と思っているのだが、購入した本はたぶん一軍級の実力だ。
興奮しすぎて、コルディコットの研究本を落としてしまった。どうもすみませんでした。(これも見たこと無い)。
ネットでみると、田中さんはこの本やで豆本展を行われたようだ。そうか、そういうお付き合いなんだな。。
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